どうしてだよ
犬が死んで以来、寂しくて仕方がないので、私は犬になることにした。
犬は父が大好きだった。
だから、父が家に帰ってきて玄関の扉を開けた瞬間に、
「あ、おとうしゃんだ!」と叫んで心の中で尾をピコピコ振る。
「わーいわーいお父さんだ」と喜びながら今のカーペットの上をコロコロする。
父が「たまにはおかえりが聞きたい」と言ったが無視した。
犬は父がいないときはひたすら父を探していたので、
家の中を歩きながら「おとうしゃんはどこ?」と言っていたら、
母に「いつもお父さんを探している」と言われた。
どうやら犬のフリではなく素でそう言っていると思われているようだ。
犬は常に父の側にいようとしたので、置いていかれるとキョトンとした。
だから私もよくわからないことがあると「どうしてだよ?」と言った。
母は「どうしてもこうしてもだよ」と怒った。